背景と目的
・今般、令和6(2024)年3月31日(日)に、第25回脳神経科学東京セミナー(主催:運動神経科学研究会 代表:小松泰喜)を「日本大学三軒茶屋キャンパス(〒154-0002 東京都世田谷区下馬3丁目34−1)」において開催する運びとなりました。開催方法は十分な感染症対策を実施し、対面開催とさせていただく予定です(オンライン配信も検討)。
・これまで成人の脳に対し目を向け、多くの研究成果と臨床効果を話題にしてきており、中でも、障害のあるアスリートの脳はニューロリハビリテーション(以下、ニューロリハ)の手本であることから、パラリンピアンを中心に、スポーツ脳科学による脳の再構築についての解説の他、神経再生がどのように神経回路の接続を持って、新たな動作を獲得やその巧緻性について議論を深めてきた。発達期だけでなく、成人期のスポーツ動作、道具の操作の他、老化の過程では杖の使い方や歩行器を使用して歩く方法も新たに習得することができ、動作を再学習するという観点から、これらはすべて運動学習としてとらえることができると考えています。この生物学的な基盤は、神経可塑性といわれ、神経接続が強化されたり、新たな神経回路がつくられたりすることにより対応していることがわかってきています。
・本研究会では、ニューロリハはこの過程を意図的に強化する方法ととらえることから、神経リハビリテーションとして、神経科学を基盤としたこれまでのあゆみを振り返り、臨床医学における臨床知や実践知をもとに、脳・脊髄機能を中心に新たな知見をセミナーごとに整理をしてきています。また、身体動作のダイナミクス(身体各部の時間的変化)など、運動学習の過程を計算論として理解することや、運動制御や学習に関する知識と基盤となる研究の紹介を重ねて取り上げてきています。
・リハビリテーション専門職(リハ医、理学療法士、作業療法士など)に目を向けると、職能団体として社会的な認知はされつつも、治療の価値やその体系の確立はいまだ十分とは言えない状況が続いています。「臨床知を感性で終わらない」、「培った治療技術をいかに科学の本質として捉えるか」という点において、今もその科学的実証や学問的背景に絶えず取り組む姿勢が問われていることは事実です。
・第25回東京セミナーでは、これまで以上に、リハビリテーション専門職の他、臨床応用が広まっているニューロモデュレーション、身体への制御や動作の対する影響や臨床的な新たな観点を省察し、基礎理学・作業療法学の先進的研究活動の推進につながる臨床思考過程として、胎児期から始まる自発運動や感覚運動経験が、ヒトの発達過程にどのような役割を持つかについて取り上げることとしました。リハビリテーション医学としてさらなる脳・脊髄の神経活動の計測技術の進歩が多くの可能性を持ち、議論し合う内容となっています。